村上 佳奈子
- 所属会社HITOWAライフパートナー
- 職場くらしスタイル研究所
- 職種研究職
大学で生命科学科 細胞遺伝学を専攻していたことから、卒業後は殺虫剤の研究ができる企業へ入社。しかし、配属されたのは除菌剤や洗剤を扱う家庭用品グループだった。想定外のキャリアのスタートとなったが、結果としてそれが今の仕事につながっている。およそ3年前に、研究所を立ち上げたばかりのHITOWAライフパートナー社から声がかかり、加盟店の生の声を研究に活かしやすいのではないかと考え、転職を決めた。
働きながら博士号取得を目指す
HITOWAライフパートナーでは、「くらしスタイル研究所」に配属された。研究所のミッションは、他の企業や教育機関・研究機関との共同研究や提携により、ハウスクリーニング事業「おそうじ本舗」が提供するサービスや商品の開発に寄与することである。入社後すぐに、くらしスタイル研究所に籍を置きながら洗浄学の権威である横浜国立大学名誉教授大矢勝先生の下で研究に従事することになった。
現在、博士課程2年目。生活環境の中の汚れや汚れ落ちを、機器を使って分析する研究に勤しんでいる。例えば、風呂場の汚れ、シンクの汚れの元素構成を数字で把握する試み。また汚れ落としにおいては、洗浄剤を使うというよりは洗浄方法でどのように変わるかを研究している。
社会人研究員として限られた時間の中で研究を続けるのは、そう甘くない。同じ博士課程には6人の社会人研究員が在籍しているが、大学で実験をしているのは村上さんのみ。「時間をやりくりしながら、丸一日大学の研究室に、研究に没頭できる環境を作っています。やると決めたからにはやり遂げたいという村上さんの想いが行動として表れています」と大矢先生は語る。
日本油化学会の洗浄に関するシンポジウムで「XRF(蛍光X線)を用いた生活環境中の汚れの分析」について発表する村上さん(2023年10月)
科学的根拠に基づいた「おそうじ本舗」事業のために
村上さんが研究室の門を叩いた大矢先生の専門は洗浄科学。取り組んでいるのは、汚れや汚れ落としを科学的な視点で示すことである。手順としては、モデルの汚れを作り、さまざまな条件を設定し、汚れが落ちる一番良い方法を見つけ出していく。その過程で洗剤が環境や安全にどのような影響があるのかも明らかにする。そこで証明された正しい情報を消費者へしっかり伝えることも使命としている。生活環境の中の汚れや汚れ落ちの可視化は、例「おそうじ本舗」の事業でいえば、科学的な根拠をもってエアコンの清掃技術の成果を示したり、あるいは技術をさらに進化させたりすることにつながる。
目標は、自分が関わった研究で利益を出すこと
村上さん自身は、将来的にも研究を続けていきたいと思っているが、企業の研究職である以上、利益につながる研究の成果を出すことが求められる。「今の目標は、自分が関わった研究で利益を出すこと。しっかりと会社の売上に貢献する成果を残したい」と村上さんは言う。
「これまでは、サービスや商品が発売されるのに合わせてエビデンスを取ってきましたが、今後は、基礎研究から新しい商品を生み出すこと、例えば、他社の事例でいうと、新規事業で異業種の化粧品領域に進出したような、エビデンスありきのサービスの開発にもチャレンジしていきたい」と夢を語る。
関係者との協働を通して、“社会から信頼を獲得できる”HITOWAライフパートナーのサービスにいかに貢献していけるのか。その想いを胸に、村上さんは日々自らの研究に熱意を傾ける。
横浜国立大学 名誉教授
放送大学神奈川学習センター 客員教授
「洗浄」は、生活用品のみならず、最近では機械金属工業の分野でもその重要性が注目されています。金属加工には潤滑油を使用しますが、その際、最終製品から潤滑油を取り除く作業に洗浄の必要が生じます。
金属加工で必要とされる一連のステップにもかかわらず同分野の中には「洗浄」の専門家はいません。そこに我々の出番があります。
洗浄技術の転用が広がりを見せてくる中で、村上さんには、まずはしっかりと研究を博士論文としてまとめることはもちろんのこと、そこからさらに違うテーマへと領域を広げていってほしいと思います。最初はテーマの間に連携がなく大変かもしれません。ただ、一旦つながりができてくると、研究を実務に適用していくうえで大きな強みとなります。この一歩として、何事もとりあえずやってみればいいとアドバイスしています。
村上さんにはそれができます。洗浄は横のつながりが大事。一つのことにあまり深くのめりこんでしまうと、専門分野の下請け会社になりかねません。社会的還元ができるような研究をやりたいというご自身の想いを確実に実現することを期待しています。HITOWAグループの社会貢献に対する企業ポリシーもきっとそれを支えてくれるでしょう。